自然の中で過ごすと気持ちが落ち着く、という研究は以前からあります。ここでは、目で見る自然ではなく、耳で聴く自然の音に絞って、研究でわかっていることを整理します。

Meta-analysis自然の音と健康の関係をまとめた研究

自然の音が健康に与える影響を調べた36件の論文を整理し、そのうち18件についてメタ分析を行った研究があります。結果として、自然の音を聴くと、ストレスや不快感が減ることを示す、まとまった証拠が見つかりました(効果量 g = −0.60)。健康状態や前向きな気分の指標も改善する傾向がありましたが、ばらつきが大きく(95%信頼区間が広い)、結果の読み取りには注意が必要です。

論文で挙げられている良い影響の例は、痛みの軽減、ストレスの低下、気分の改善、認知的なパフォーマンスの向上などです。

Buxton, R.T., Pearson, A.L., Allou, C., Fristrup, K., & Wittemyer, G. (2021). A synthesis of health benefits of natural sounds and their distribution in national parks.

Proceedings of the National Academy of Sciences, 118(14), e2013097118. https://doi.org/10.1073/pnas.2013097118

自然の音の健康への効果を調べた36件の論文を整理し、18件をメタ分析した研究。ストレスと不快感の軽減について、まとまった証拠が示された。

In the Body体の中では何が起きているのか

自然の音と人工的な音を聴いたときの、体と脳の反応を比べた実験があります。この研究では、自然の音を聴いたときに、副交感神経の活動を示す心拍変動の指標(高周波成分)が高まっていました。また、脳の中で安静時に働くネットワーク(デフォルトモードネットワーク)の内部のつながり方にも、変化が見られました。

さらに、こうした反応の出方には、その人がもともと持っている脳や自律神経の状態による個人差があることも示されています。同じ音を聴いても、反応には人によって違いがある、ということです。

Gould van Praag, C.D., Garfinkel, S.N., Sparasci, O., Mees, A., Philippides, A.O., Ware, M., Ottaviani, C., & Critchley, H.D. (2017). Mind-wandering and alterations to default mode network connectivity when listening to naturalistic versus artificial sounds.

Scientific Reports, 7, 45273. https://doi.org/10.1038/srep45273

自然の音と人工的な音を聴いたときの、自律神経と脳活動を比べた実験。自然の音で副交感神経の活動が高まり、脳のネットワークのつながり方にも変化が見られた。

Why?なぜ落ち着くのか

なぜ自然の音で落ち着くのかについては、まだ決着がついていません。研究者の間では、自然の刺激がストレスからの回復を促すという「ストレス回復理論」や、自然に触れることで注意の疲れが回復するという「注意回復理論」といった考え方が使われています。注意回復理論については、二十四節気ってなに?箏曲と季節の関係でも少し触れています。

和楽器の世界にも、自然の情景を題材にした曲があります。宮城道雄の「春の海」は、その一例です。自然の音を聴くことと、自然を題材にした音楽を聴くことが、同じように働くかどうかは、この記事の研究からはわかりません。

FAQよくある質問

Q. 録音した自然の音でも、効果はありますか?

A. 紹介した研究には、録音した音を聴いてもらう実験が含まれています。実際の屋外で聴く場合と、効果が同じかどうかは、この記事ではわかりません。

Q. どんな自然の音がよいですか?

A. 研究で使われる音は、水、鳥、風などさまざまで、どれが最もよいとは言えません。聴いて心地よいと感じる音を選ぶのが現実的です。

Q. 自然の音を聴いても、落ち着かない場合はありますか?

A. 反応の出方には個人差があることが示されています。落ち着かないと感じる場合は、無理に聴く必要はありません。

Relatedあわせて読みたい

コラム 二十四節気ってなに?箏曲と季節の関係 → コラム 箏の音色とウェルビーイングの関係 →