近年、海外のウェルネス施設やヨガスタジオで「サウンドヒーリング」「サウンドバス(音浴)」と呼ばれるセッションが人気を集めています。シンギングボウルやゴングの音に身を委ね、深いリラックス状態を目指すというものです。

演奏家として興味深いのは、これらの楽器と箏・十七絃が、音響的にとても近い性質を持っているという点です。

What is it?サウンドヒーリングとは

サウンドヒーリングでは、単一の音を長く伸ばし、豊かな倍音(オーバートーン)を聴かせることが多く行われます。シンギングボウルの「ゆらぎ」を伴う持続音が、聴く人の意識をゆっくりと内側に向けていくと言われています。

Goldsby, T.L., Goldsby, M.E., McWalters, M. & Mills, P.J. (2017). Effects of Singing Bowl Sound Meditation on Mood, Tension, and Well-being: An Observational Study.

Journal of Evidence-Based Complementary & Alternative Medicine, 22(3), 401–406. https://doi.org/10.1177/2156587216668109

シンギングボウルを用いた音瞑想セッションの前後で、参加者の緊張・怒り・疲労感が有意に減少したことを報告した観察研究。持続音と倍音を用いたサウンドセッションが、主観的なウェルビーイングの向上と関連することを示している。

Two Instruments倍音でつながる、シンギングボウルと十七絃

箏や十七絃も、一音を弾いたあと、豊かな倍音を含みながら長く響き続ける楽器です。特に太い弦を持つ十七絃の低音は、体に響くような物理的な振動を伴い、サウンドバスで使われるゴングの響きとよく似た感覚を与えることがあります。

シンギングボウル

  • 金属製、擦り鳴らして持続音を作る
  • 豊かな倍音とうねり(ビート)
  • 瞑想・リラクゼーション用途で発展

箏・十七絃

  • 絹・化学繊維の弦を爪で弾く
  • 減衰しながら続く豊かな余韻
  • もともと祈りや儀礼とも関わりが深い

箏曲の中には、もともと神事や祈りの場で演奏されてきた歴史を持つ曲もあります。「音に身を委ねる」という体験は、和楽器の世界でも昔から大切にされてきた感覚だと思います。ひとつの音の中に、実はたくさんの倍音が重なっているのです。

お伝えしたいこと

サウンドヒーリングや音浴は、医療行為ではなく、あくまでリラクゼーションのひとつの手段です。心身の不調が続く場合は、専門医への相談を優先してください。

As a Performer演奏家として思うこと

サウンドヒーリングという言葉で、あらためて自分の楽器の音を聴き直すと、これまで気づかなかった響きの豊かさに出会うことがあります。技巧やメロディだけでなく、「音そのものに浸る」という聴き方も、和楽器の新しい楽しみ方として広げていけたらと思っています。