二十四節気(にじゅうしせっき)は、太陽の動きをもとに一年を24等分し、それぞれに季節の名前をつけた暦の文化です。「立春」「雨水」「啓蟄」……聞き慣れない言葉も多いかもしれませんが、いまも天気予報や俳句の季語として、日本人の暮らしのなかに息づいています。
箏曲の世界では、この季節感がそのまま作品のタイトルや情景描写になっていることが少なくありません。演奏家として、季節を弾き分けるという感覚を大切にしています。
Music & Season季節を映す、箏曲というジャンル
「春の海」「六段の調」「秋の言の葉」——箏曲の代表的な曲目には、季節をテーマにしたものが数多くあります。四季がはっきりした日本の風土のなかで、演奏家たちは自然の移ろいを音の強弱・間・旋律のうねりに置き換えてきました。
春
芽吹き・霞を思わせる
やわらかな旋律
夏
涼を呼ぶ、水音を
思わせる速い音型
秋
虫の声を思わせる
余韻の長いフレーズ
冬
静寂を強調する
間の長い構成
これは単なる標題音楽的な工夫ではなく、「自然そのものを美として味わう」という、日本人の自然観そのものの表れだと感じています。
Saito, Y. (1985). The Japanese Appreciation of Nature.
日本の伝統的な自然観・美意識を分析した論文。四季の移ろいや無常観そのものを鑑賞の対象とする感性が、日本文化の美的判断に深く根づいていることを論じている。
Well-being季節を感じることと、こころの健康
環境心理学の分野では、自然の変化に意識を向けることが、心の回復力(レジリエンス)と関わっているという研究もあります。二十四節気のように「小さな季節の変化」を言語化し、味わう文化は、忙しい現代人にとって、立ち止まるきっかけになるのかもしれません。
Kaplan, S. (1995). The restorative benefits of nature: Toward an integrative framework.
自然環境との関わりが、注意資源の回復(Attention Restoration)に寄与することを提唱した基礎研究。四季の移ろいなど、自然の穏やかな変化に意識を向けること自体が、心理的な回復効果を持つ可能性を示している。
二十四節気は、一年かけて演奏される曲の譜面のようなものだと考えると分かりやすいかもしれません。
As a Performer季節に合わせて弾く曲を選ぶ
立川の教室でも、季節の変わり目には、生徒さんとその時期にふさわしい曲の話をすることがあります。カレンダーを眺めるだけでは気づかない小さな変化を、音を通して感じてもらえたらいいなと思っています。