「音楽療法」は、音楽を使ったケア全般を指す言葉として使われることもありますが、研究や医療の分野では、もう少し区別して使われています。
Definitions音楽療法と「音楽を聴くこと」のちがい
がん患者への音楽の効果を調べたコクランレビューでは、音楽を使った介入を2つに分けています。1つは、訓練を受けた音楽療法士が行う「音楽療法」。もう1つは、事前に録音された音楽を、医療スタッフが聴いてもらう「ミュージックメディスン」です。
音楽療法
- 訓練を受けた音楽療法士が提供する
- 目的に合わせて、音楽を使った活動を組み立てる
ミュージックメディスン
- 事前に録音された音楽を聴いてもらう
- 医療スタッフが提供する
このレビューは、52件の試験(参加者は合計3,731人。うち23件が音楽療法、29件がミュージックメディスン)をまとめたものです。結果として、音楽を使った介入は、がん患者の不安、痛み、疲労、生活の質に良い影響を与える可能性が示されました。心拍数、呼吸数、血圧への小さな効果の可能性もあります。ただし、多くの試験でバイアスのリスクが高いことにも触れられています。
Bradt, J., Dileo, C., Magill, L., & Teague, A. (2016). Music interventions for improving psychological and physical outcomes in cancer patients.
がん患者に対する音楽療法とミュージックメディスンの効果を、52件の試験から評価したコクランレビュー。不安・痛み・疲労・生活の質への良い影響の可能性を示す一方、多くの試験でバイアスのリスクが高いとしている。
Depressionうつ病に対する音楽療法の研究
うつ病については、音楽療法の効果を調べたコクランレビューがあります。9件の研究(参加者421人)を対象に、通常の治療に音楽療法を加えた場合と、通常の治療のみの場合を比べました。その結果、通常の治療に音楽療法を加えたほうが、短期的にうつの症状が改善するという、大きな効果が見られました(確かさは中程度)。
一方で、心理療法など他の治療法との比較については、対象となった研究が少なく、確かなことは言えない状況です。
Aalbers, S., Fusar-Poli, L., Freeman, R.E., Spreen, M., Ket, J.C.F., Vink, A.C., Maratos, A., Crawford, M., Chen, X.-J., & Gold, C. (2017). Music therapy for depression.
うつ病に対する音楽療法の効果を、9件の研究(421人)から評価したコクランレビュー。通常の治療に音楽療法を加えると、短期的にうつ症状が改善するという結果だった。他の治療法との比較は、研究が少なく確かなことは言えない。
In Japan日本での現状
日本では、2001年4月に、複数の関連団体を統合する形で、日本音楽療法学会が設立されました。学会は、音楽療法士の資格を認定する制度を運用しています。ただし、音楽療法士は国家資格ではありません。活動するうえで必須の資格はなく、学会の認定資格は、国家資格化までの暫定的な位置づけとされています。
上記は、執筆時点で確認できた情報です。資格制度や認定の状況は変わることがあるため、最新の情報は、日本音楽療法学会の公式な案内をご確認ください。
なお、音楽を聴くとストレスは減る?コルチゾールの研究のように、録音された音楽を聴いてストレスを和らげる話は、上の「ミュージックメディスン」に近いものです。音楽療法士が関わる音楽療法とは、分けて考える必要があります。
お伝えしたいこと
このページは、音楽療法についての一般的な情報であり、診断や治療を目的としたものではありません。受けてみたい場合は、主治医や、音楽療法を実施している施設にご相談ください。
FAQよくある質問
Q. 音楽療法士は国家資格ですか?
A. 執筆時点では国家資格ではありません。日本音楽療法学会による認定資格があり、活動にあたって必須の資格もありません。最新の状況は、学会の公式な案内でご確認ください。
Q. 楽器が弾けなくても、音楽療法は受けられますか?
A. 音楽療法は演奏の上達を目的とするものではなく、一般に、楽器の経験は必要とされません。実施している施設にご確認ください。
Q. 音楽を聴くことと、音楽療法は何が違いますか?
A. コクランレビューでは、訓練を受けた音楽療法士が提供するものを「音楽療法」、事前に録音された音楽を医療スタッフが聴いてもらうものを「ミュージックメディスン」として区別しています。