寝る前に音楽を聴くのは、手軽に始められる方法のひとつです。ただ、「効く」と言い切れるのか、何がわかっていて何がわかっていないのかは、分けて考える必要があります。
The Evidence睡眠の質は改善する、という報告
成人で睡眠の悩みがある人を対象に、音楽を聴くグループと、何もしない(または通常の対応のみの)グループを比べたランダム化比較試験を集めて分析した、コクランレビューがあります。対象の試験では、事前に録音された音楽を、毎日25〜60分、3日間から3か月の期間にわたって聴いていました。
結果として、睡眠の質を測るPSQI(ピッツバーグ睡眠質問票。0〜21点で、点数が低いほど睡眠の質が良い)は、音楽を聴いたグループで改善しました(平均差 −2.79点、10試験・708人、確かさは中程度)。改善の大きさは、おおよそ標準偏差1つ分にあたります。また、報告された範囲では、有害事象はありませんでした。
Jespersen, K.V., Pando-Naude, V., Koenig, J., Jennum, P., & Vuust, P. (2022). Listening to music for insomnia in adults.
成人の睡眠の悩みに対する「音楽を聴くこと」の効果を、ランダム化比較試験から評価したコクランレビュー。睡眠の質は改善した一方、不眠の重症度などには明確な差が見られず、結果の確かさにはばらつきがある。
Not Yet Clearまだはっきりしていないこと
睡眠の質(本人の評価)
音楽を聴いたグループで改善。確かさは中程度。
不眠の重症度
明確な差は見られず。確かさは非常に低い。
寝つくまでの時間・総睡眠時間・睡眠効率
改善する可能性がある。確かさは低い。
機器などによる客観的な測定
改善しない可能性が示された(3試験・136人)。
つまり、「眠りの質が良くなったと感じる」ことは多くの研究で示されている一方で、実際に眠っている時間などを測ると、はっきりした改善が見られない場合もあります。感じ方と測定値は、分けて見る必要があります。
A Study of Students学生を対象にした研究
睡眠に悩みのある19〜28歳の学生94人を、就寝時に45分間リラックスできるクラシック音楽を聴くグループ、オーディオブックを聴くグループ、何もしないグループに分けて、3週間比べた研究があります。著者らは、リラックスできるクラシック音楽が、睡眠の問題を減らすのに有効な方法だと結論づけています。
Harmat, L., Takács, J., & Bódizs, R. (2008). Music improves sleep quality in students.
睡眠に悩みのある学生94人を対象に、就寝時の音楽・オーディオブック・介入なしを3週間比較した研究。著者らは、リラックスできるクラシック音楽が睡眠の問題を減らす有効な介入だと結論づけている。
Trying It取り入れるときの例
研究ごとに音楽の種類や聴き方が違うため、「この方法が正解」とは言えません。あくまで例ですが、次のような工夫があります。
音量は小さめに
眠りを妨げない程度の音量にします。
タイマーを使う
朝まで流し続けず、30〜60分ほどで止まるように設定する方法があります。
曲は心地よいものを
好みに合うものを選びます。上で紹介した学生の研究では、リラックスできるクラシック音楽が使われました。
お伝えしたいこと
眠れない状態が続く、日中の生活に支障が出ているといった場合は、音楽だけで対応しようとせず、医療機関にご相談ください。
FAQよくある質問
Q. どんな音楽がよいですか?
A. この記事の研究からは、ジャンルを断定できません。コクランレビューの対象は、事前に録音された音楽を25〜60分聴く試験で、学生の研究ではリラックスできるクラシック音楽が使われました。
Q. 一晩だけ聴いても効果はありますか?
A. コクランレビューの試験は、3日間から3か月の期間、続けて聴くものでした。一晩だけの効果は、この記事の研究からはわかりません。
Q. 眠れない日が続くときは、どうすればよいですか?
A. 睡眠の悩みが続く場合は、音楽だけで対応しようとせず、医療機関にご相談ください。