楽器の演奏では、同じ姿勢で、同じ動作を長時間続ける場面が少なくありません。演奏に関連する筋肉・骨・関節の痛みについては、プロの演奏家を対象にした研究が数多くあります。

How Commonどのくらい多いのか

プロの器楽奏者の筋骨格系の痛みについて、21件の論文(合計5,424人)をまとめた系統的レビューがあります。報告されている割合は研究によって幅があり、調査時点で痛みがある人は9〜68%、過去12か月では41〜93%、生涯では62〜93%でした。

部位では、首と肩が最も多く、肘が最も少ない結果でした。12件中10件の研究で、女性のほうが多いという結果も出ています。楽器別では、金管楽器の奏者が最も少ないと報告されています。ただし、バイアス(偏り)のリスクが高い研究も多く、数字の幅が大きい点には注意が必要です。

Kok, L.M., Huisstede, B.M.A., Voorn, V.M.A., Schoones, J.W., & Nelissen, R.G.H.H. (2016). The occurrence of musculoskeletal complaints among professional musicians: a systematic review.

International Archives of Occupational and Environmental Health, 89(3), 373–396. https://doi.org/10.1007/s00420-015-1090-6

プロの器楽奏者の筋骨格系の痛みについて、21件の論文(5,424人)を整理した系統的レビュー。首と肩が最も多く、研究間で割合に大きな幅があることを報告している。

ドイツのプロのオーケストラ奏者408人(回答率57%)を対象にした調査では、89.5%が過去または現在に演奏に関連する痛みを経験していました。直近3か月では62.7%、調査時点では8.6%が痛みを感じていました。すべての楽器群で、首が最も多い部位でした。

約43%の人は5か所を超える部位に痛みがあり、約40%が頻繁または持続的な痛みを挙げています。性別(女性)と、舞台あがり(緊張)が、痛みの予測因子として確認されました。

Steinmetz, A., Scheffer, I., Esmer, E., Delank, K.S., & Peroz, I. (2015). Frequency, severity and predictors of playing-related musculoskeletal pain in professional orchestral musicians in Germany.

Clinical Rheumatology, 34(5), 965–973. https://doi.org/10.1007/s10067-013-2470-5

ドイツのプロのオーケストラ奏者408人を対象に、演奏に関連する筋骨格系の痛みの頻度・強さ・予測因子を調べた調査。多くの奏者が痛みを経験し、女性であることと舞台あがりが予測因子だった。

Causes原因として考えられていること

これらの研究は、痛みの頻度や関連する要因を調べたもので、原因を直接特定したものではありません。そのうえで、一般には、長時間同じ姿勢を続けること、同じ動作を繰り返すこと、休憩が少ないことなどが負担になりやすいと考えられています。首や肩に限らず、座って演奏する場合は、背中や腰にも負担がかかることがあります。

上の調査で、舞台あがり(緊張)が痛みの予測因子になっていたことは、気持ちの面と体の痛みが関わっている可能性を示しています。緊張については、緊張は、チカラに変わる。もご覧ください。

Check Points姿勢を見直すときの観点

ここからは、研究で効果が確認された方法ではなく、一般的なセルフチェックの観点です。

🪑

座る位置と高さ

楽器との距離や、座る高さが体に合っているか。無理に腕を伸ばしたり、体をひねったりしていないか。

💪

首や肩の力み

弾いているあいだに、肩が上がっていないか。ときどき息を吐いて、肩を下ろす習慣をつける。

⏱

練習時間と休憩

長時間続けて弾かず、区切りごとに立ち上がって体を動かす。

📝

痛みの出る場面

どの動作のときに痛むかを記録しておくと、受診したときに説明しやすい。

お伝えしたいこと

痛みやしびれが続く、強くなる、指が動きにくくなるといった場合は、無理に練習を続けず、整形外科や、演奏家の診療を行っている医療機関にご相談ください。

FAQよくある質問

Q. 演奏家の何割くらいが、痛みを経験していますか?

A. 研究によって幅があります。系統的レビューでは、生涯での割合が62〜93%と報告されています。ドイツのオーケストラ奏者の調査では、89.5%が過去または現在に痛みを経験していました。

Q. 女性のほうが痛みが多いのですか?

A. 系統的レビューでは12件中10件、オーケストラ奏者の調査でも、女性であることが痛みの予測因子でした。理由については、この記事では扱っていません。

Q. 箏奏者に特化したデータはありますか?

A. この記事で紹介した研究は、主に西洋楽器の演奏家が対象です。箏に特化したデータは、この記事では扱っていません。

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