呼吸は、意識して変えられる数少ない体の働きのひとつです。心拍や自律神経と関わりが深いため、緊張を落ち着かせる方法としてよく紹介されます。ここでは、研究でわかっていることを確認します。

What Happensゆっくり呼吸すると、体に起きること

ゆっくりした呼吸の効果を調べた研究を、MEDLINEとSCOPUSで検索して整理した系統的レビューがあります。2,461件の論文のうち、条件を満たした15件が対象です。主に、健康な人での結果が整理されています。

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自律神経

心拍変動(HRV)と呼吸性洞性不整脈(RSA)が増える。副交感神経の活動が高まることを示す変化とされる。

🧠

脳波

α波が増え、θ波が減る変化が報告されている。

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気持ち

心地よさやリラックス感が高まる一方、覚醒や不安、抑うつ、怒り、混乱といった症状が減ると報告されている。

Zaccaro, A., Piarulli, A., Laurino, M., Garbella, E., Menicucci, D., Neri, B., & Gemignani, A. (2018). How breath-control can change your life: a systematic review on psycho-physiological correlates of slow breathing.

Frontiers in Human Neuroscience, 12, 353. https://doi.org/10.3389/fnhum.2018.00353

ゆっくりした呼吸が、自律神経・脳活動・心理面に与える影響を、15件の研究から整理した系統的レビュー。健康な人で、副交感神経活動の指標や脳波、気分の面での変化が報告されている。

The Mechanism体のしくみ

別のレビューでは、ゆっくりした呼吸が、呼吸筋の活動、換気の効率、血液の流れ、心拍変動、心臓と呼吸の連動、交感神経と副交感神経のバランスなどに及ぼす影響が整理されています。呼吸法は広く取り入れられている一方で、医学の分野ではまだあまり扱われておらず、今後さらに検討が必要だと、著者らは述べています。

Russo, M.A., Santarelli, D.M., & O'Rourke, D. (2017). The physiological effects of slow breathing in the healthy human.

Breathe, 13(4), 298–309. https://doi.org/10.1183/20734735.009817

健康な人を対象にした、ゆっくりした呼吸の生理学的な効果に関するレビュー。呼吸器・心血管・自律神経系への影響を整理し、臨床への応用にはさらに研究が必要だとしている。

Before a Performance本番前に使うときの考え方

ここで紹介した研究は、主に健康な人を対象にした実験や、それをまとめたレビューです。本番前の演奏家を対象にした結果ではないため、「本番の緊張にこれだけ効く」と言うことはできません。体の状態を落ち着ける方法のひとつとして、試してみる価値はある、という位置づけだと考えています。

具体的な呼吸の方法は、研究や流派によってさまざまです。例として、鼻からゆっくり息を吸い、吸うときと同じか、少し長い時間をかけて息を吐く方法があります。無理のない範囲で行い、苦しくなったり、めまいがしたりしたときはやめてください。本番で初めて試すより、お稽古や練習の中で事前に試しておくと安心です。

緊張そのものの捉え方については、緊張は、チカラに変わる。で、別の研究を紹介しています。

お伝えしたいこと

呼吸器の病気がある方や、動悸・めまいなどの症状が出る方は、無理に行わず、医師にご相談ください。

FAQよくある質問

Q. 何回くらい深呼吸すればよいですか?

A. 回数や時間の目安は、この記事で紹介した研究からは決められません。研究ごとに方法が違うためです。無理のない範囲で、落ち着いたと感じるところまで続けるのが、ひとつの考え方です。

Q. 演奏中の呼吸にも使えますか?

A. この記事で紹介した研究は、主に健康な人を対象にした実験をまとめたものです。演奏中の呼吸への応用は、この記事では扱っていません。

Q. 緊張が強すぎる場合は、どうすればよいですか?

A. 動悸や息苦しさなど、強い症状が続く場合は、呼吸法だけで対応しようとせず、医療機関にご相談ください。

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